おバカなSide stories♪◆◆◆vol.03
IN THE THEATER+++[02]
「…ぶっっ…!!…ごほっ…!!」

予想だにしなかった始まりに思わず飲みかけたコーヒーが気道に入り込みむせる一。
対照的に涼はコーヒーを飲みつつ平然と画面に目を向けている。隣でむせ続ける一を心配するどころか、その様子を見ていかにも楽しそうである。
「ははっ、ばーか、そのくれーで吹き出してんじゃねーよっ。まだ始まったばっかだぜ?」

その言葉に元はと言えばこんな映画に誘ったおまえのせいだと恨めしそうな目を向ける一。
「・・・りょ〜〜〜〜〜お・・・、なんなんだよこりゃぁ・・・。テメェアダルト見せる気かッッ・・・!!」
しかしそうボヤきながらも聞こえないほどの声でぼそりとつぶやいた。

"ま、確かに飽きねえかも・・・"

やはり健全な男子高校生であれば、ワケのわからないマニアックな映画よりも、危険な香りのするアダルトチックな刺激が欲しいと思うのは当然といえば当然か。

しかし、である。

これがちょっと男心をくすぐるアダルトな内容だとしても、だ。

この隣にいる自己チュー男と一緒に肩を並べて見なければならないという状態がどうにも不満らしい一。
それは涼も同じだったのだろう、思わず独り言をつぶやく。

「しっかしこれ18禁だったかよ…?」



どうやら冗談でも、お互いこの相手と一緒にアダルト映画を見るつもりは毛頭ないらしい。



涼のセリフにホッとしたのか、一の口からもポロリと漏れる一言。

「ま、オメェとオレの図体じゃ、どう見ても18禁にゃ引っかかる心配はねェと思うがな」
「ははっ、そりゃ言えてるぜっ。」

この点については涼も同意見らしい。間髪を入れずに同調する。

片や183cmの空手有段者、片や184cmのサッカー部員。端から見たくらいではわずか1cmという身長差はないに等しい。更に細身の割にはそれなりに筋力のある体型まで似通っている。いや、正確には空手と喧嘩で慣らした一は上半身、鋭いキレ味のシュートや走り込みで鍛えた涼は下半身、とそれぞれ得意分野の差で僅かながら相手よりも優れている部分は違うようだが。
加えていかにも無愛想で目つきの鋭い所までそっくりなためか、全くの他人にも関わらず、顔つきまで似ていると言われる二人。一言で言うとマトモな普通の高校生だったらあまりお友達にはなりたくない分野の人種というべきか。なんと言っても彼らの場合、身長以前に第一印象からしてお世辞にもマジメそうな好青年とは程遠いのだ。私服姿のこの二人を見て高校生だと思う者はまずいない。


一通りコトが済んだ頃、いきなりマッチョの男が登場
今までベッドにいた男の方と絡み始めた


思いもかけない展開である。
これには涼も思わず手に持っていた缶コーヒーを落としそうになる。
が、なんとかこらえると何事もなかったかのようにぼそりとつぶやく。

「…こっ、この監督はいつも裏をかいてくっから面白ぇんだよっ。」
本人としては映画とその監督をフォローしてるつもりらしいが、内心ではかなり冷や汗をかいているようだ。

その涼の隣で異様な展開に固まっていた一。何やら答えようと口を開けかけた。しかし、その時スクリーンに現れた人物を目にすると再び硬直する。


次に現れた男は一見ひょろりとしてうだつの上がらなそうなサラリーマン風
しかしその男はいきなりベッドの上の男達に向かって鞭を振り下ろしながら叫ぶ!

「あんたたちっ!あたしのいないスキにこっそりなにやってんのよッッ!!」

そのベッドの脇で最初の女はすっかり立場をなくしている



更なる展開に声も出ない二人。やっとのことで一が口を開く。

「・・・・・・・・・おい・・・・。オメェ・・・、もしかしてこういうの・・・・趣味か?」
「だから違うって言ってんだろうがよっ…」

口調はいつものままだが、共に缶コーヒーを片手に画面に目は釘付け、まさに金縛り状態である。


三人の男が絡んでいるのをよそに女はいそいそと服を着て出て行く
その後の絡みは必要ないと思ったのか徐々にフェイドアウト、場面転換―――



出だしからのこの展開に一を誘った涼ですら、ついて行くのがやっとの状態らしい。

「あんないかにも冴えない男が実はモーホーだったりすんのかよっ…!!
っつーかオカマか?…まっ、この際どっちだっていいけどよっ…」

独りつぶやいてみたが、その声はしっかり隣に聞こえていたらしい。

「・・・おまえ今さっき、『この監督は裏をかいてくる』つってたじゃねぇかっっ・・。」
非難の目を向けられ多少たじろぐ涼。

「…い、いやっ、そうだったよなっ・・・」

いつもの勢いで言い返せない程支離滅裂な出だしにかなり困惑しているらしい。
しかし一はそのまま冷めた眼差しで涼をじっと見ている。

「なっ、なんだよその目はよっ・・・別にどう反応しようが俺の勝手だろっ・・・!?」
半ば自暴自棄とも取れるような涼の態度に一もソレ以上ツッコんでもムダだと思ったらしい。

「ハイハイ・・・ご自由に・・・・・・。」
そう言うと再び画面に目を向ける。


カメラは街中を歩く女を追っている
どうやら最初の女のようだ
心なし足取りが重い彼女に学生服を着た高校生らしき男が声をかける

「貝割れ大根とえんどう豆、どっちが食べたいですか?」

女は最初無視していたがあまりにしつこかったため「貝割れ大根」と応えてしまった

「そんなあなたには銀行強盗がお似合いです。」

にっこりと笑うと男はいきなりクロロホルムを女に嗅がせたのである



「・・・甘ぇな・・。」
一がつぶやく。
「そこで一発『枝豆!』って叫ぶんだよ。でなきゃ勝ち組にゃあ残れねぇなあ・・。」
独りぶつぶつとつぶやいては謎の笑みを浮かべる隣の男を怪訝そうに見る涼。

「勝ち組って何なんだよっ…??」
しかし、一はニヤリとほくそえんで答えた。

「そいつはタダじゃ教えらんねぇなぁ。」


気絶した女を乗せた車はとある建物の前で止まる
そこで場面が変わり、目を覚ました女がいたのは学校の教室
周りにはおよそ学生とは思えない年の男ばかりがうようよしている
大学生らしい若者もいれば腰の曲がりかけた老人などその年齢は様々だ
事態を飲み込めていない女に向かって傍にいた中年の男が声をかけた

「やあやあ、新入生ですね、 それも女性とは。 紅一点じゃないか。」



作者アトガキ◆◆◆
いよいよ映画上映開始。しかし映画館の中でも毒舌コンビです♪
おまけに映画も???な内容だし(笑)無事に最後まで行けるのか…。(笑)
読めば読むほどワケわからなくなっていきます。お楽しみに♪(爆)



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